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kkj 特集~環境共生と美しい日本の風景

環境共生のまちづくり

建築は人々の眺めの中にあり、
美しい眺めを育てるためにあらゆる努力をしなければならない
(真鶴町「美の基準」 眺めの基本的精神より)

真鶴町の「美の基準」

共有する作法をデザインコードとしてルール化する

土地利用規制規準により、建物の高さや規模などを規制しての美しいまちづくりを行うことはできません。
法律的な問題をクリアしていれば、どんなに景観を壊そうとも、建築主は好きなように自分の土地に建築を建てることが「問題ナシ」とされてきたのです。

そこで真鶴町では、まちづくりにおける「美」を個人的な主観としないために,8つの原則(基準)をたてました。 「場所」「格づけ」「尺度」「調和」「材料」「装飾と芸術」「コミュニティ」「眺め」の八つの基準を骨格として、キーワードを定め、前提条件、解決法などの解説に、イラストや写真などを加えた詩的なデザインコードを「美の基準」として定め、これを遵守するまちづくりを展開しています。

「美しいまち」は、これまで住民が何らかの作法を分かち合ってきた結果、長い年月をかけてつくられたものである。

その共有してきた大事な作法をデザインコードとして置き換え、現在のまちづくりに活かすというこの取り組みは、これから環境共生まちづくりを考える上で、大いに参考になる事例です。

この真鶴町の「美の基準」の考え方のヒントとなったのが、プリンス・オブ・ウェールズ、チャールズ皇太子が著した「英国の未来像-建築に関する考察」(出口保夫訳、東京書籍1991年)です。
かつての美しかったイギリスの歴史的建築物が、次々と取り壊されていくことを心配したチャールズ皇太子がこの著書の中で書いている「建築の10の原則」は、遠い国のことでありながら、都市に住む人間にとって、国や時間を超えて共通の普遍性をもつものでした。
(参照:真鶴町HP-美の基準より)

(参考資料:『創造学の誕生-闇と聖を活かすゆたかさを求めて』著者:五十嵐敬喜・小松和彦 発行:ビオシティ)

美しい風景を共有の財産に

共有しあえる場を設ける

真鶴町の取り組みでは、今まで培ってきたまちの作法を現在のまちづくりに活かしていました。しかし、この取り組みをそのまま自分の住むまちで行えないからといって、諦めることはありません。まちはそれぞれに歴史があり、景観の質を上げようとする手法もそれぞれにあった方法があります。
もし、あなたの住むまちの景観を含めた環境の質を上げたいという希望があるなら、下記のように「みんなで共有する-シェアリング」という手法を取り入れてはいかがでしょうか。

住宅の背道を活かす

表の道に対して、家の背道は裏にあたる。つまり二つの顔を持つ。
背道はセミパブリック的なコミュニケーションの場として機能する。(屋久島環境共生住宅)
駐車スぺースを活かす

駐車スペースと共有部分を兼ね、限られた敷地ながらも共有部分を多く確保し、既存樹の保存にも成功している。(宮崎台桜坂)
共有部分のビオトープを活かす

集合住宅の共有部分に設けられたビオトープは、子供たちの遊び場としても、近隣住民の憩いの場としても機能する。(深沢環境共生住宅)
緑でまちなみをつなげる

住宅の入り口部分(私的空間)と、前面道路(公的空間)が緑によって連続性をもち、個々の要素が しっくりと馴染んだ景観を生み出している。
素材の質をあわせることも景観質を向上させる上で重要な要素となる。

個々の住宅で保有するとたいへんな負担がかかる施設や空間も、各宅地で少しずつ提供しあってシェアリングしたり、共有しあうことで、街の中に実現することができます。自分が住むまちの中に、誰かと共有しあう憩いの場や、活動の場を設けていくことで、まちや暮らしにゆとりが生まれ、その質を高めることができます。
また、これらの共同利用や共同管理を通して、居住者間の交流が促されていくためには、管理に際して負担面ばかり大きくならないように、楽しみながら行える方法を考えることも必要です。
どんなことも楽しみがなければ、長続きしづらい。「勉強と同じ」といえば、共感しやすいでしょうか。

住む人たちがその場所を大切に思う気持ちや、管理を通しての楽しみがなければ、 いつかその場所は廃れていきます。
ではどうしたら、今の愛すべきまちや空間を、次の世代にとっても同じように感じてもらえるのでしょうか?

次は美しいまちなみを持続させ、成熟させるためにどうすればいいのか、その方法を探してみましょう。

熟成するまちなみ

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